主な作品紹介


第1章 Haarlem, Utrecht and Amsterdam: painters of the beginning of the Golden Age
ハールレム、ユトレヒト、アムステルダム
オランダ黄金時代幕開けの画家たち

 17世紀初頭から、オランダの各都市において画家たちが活発に制作活動を行い、独特の絵画を発展させていきました。特に、ハールレム、ユトレヒト、アムステルダムでは、イタリアやフランスで経験を積んだ画家たちが独自の絵画を開花させていきます。序章となる本章では、当時ヨーロッパで人気を博した画家ヘンドリック・ホルツィウスや明暗技法と豊かな色彩を融合した独創的な画家アブラハム・ブルーマールトなどの作品を通して、黄金時代の幕開けを紹介します。

アブラハム・ブルーマールト
《ラトナとリュキア人の農民》

1646年
油彩、カンヴァス 69.8 x 100.4 cm
ユトレヒト中央美術館

Abraham Bloemaert
Latona and the Lycian Peasants
1646
Oil on canvas 69.8 x 100.4 cm
Centraal Museum, Utrecht, inv. no. 2573
Image & copyright ⓒ Collection Centraal Museum, Utrecht

第2章 Painters of Dutch landscape
風景画家たち

 17世紀のオランダ絵画で最も発展をとげたのは、風景画でした。風景画は様々なテーマで描かれ、画家たちは町の風景、夜の風景、郊外の風景などそれぞれ得意分野を中心に制作していました。ヤーコプ・ファン・ライスダール、ヤン・ファン・ホイエンなどに代表される17世紀オランダ風景画は、季節や時間で移り変わる当時のオランダの風景、自然、町の様子などを現代に新鮮に伝えています。

アールベルト・カイプ
《牛と羊飼いの少年のいる風景》

1650 - 1660年頃
油彩、カンヴァス 101.5 x 136.0 cm
アムステルダム国立美術館

Aelbert Cuyp
Landscape with Cows and a Shepherd Boy
ca. 1650 – 1660
Oil on canvas 101.5 x 136.0 cm
Rijksmuseum, Amsterdam, inv. no. SK-A-3754
Purchased with the support of the Stichting tot Bevordering van de Belangen van het Rijksmuseum

第3章 Italianate landscape painters
イタリア的風景画家たち

 当時、イタリアに旅し学んだオランダ出身の画家は多く、彼らはその影響を色濃く残した作品を制作しています。明るい陽光、朽ちた古代の遺跡、新鮮な青い空──オランダ風景画とは一風異なるエキゾチックな風景が描かれたイタリア風の風景画は、オランダで人気のある分野だったため、イタリアを訪れたことのない画家も様式を真似て描いていました。

ヤン・バプティスト・ウェーニクス
《地中海の港》

1650年頃
油彩、カンヴァス 91.5 x 117.5 cm
個人蔵

Jan Baptist Weenix
A Mediterranean Harbour Scene
ca. 1650
Oil on canvas 91.5 x 117.5 cm
Private Collection

第4章 Painters of Dutch landscape
建築画家たち

 オランダで発達したユニークな分野のひとつである教会建築内部の絵画。建築画を得意とした画家たちは、様々な都市に建てられた教会の白い壁のシンプルな内部を、遠近法を用いて細やかな描写で描いています。この分野を得意とした画家にはピーテル・サーンレダムが有名で、本展でもその作品が紹介されます。

ピーテル・サーンレダム
《聖ラウレンス教会礼拝堂》

1635年
油彩、板 45.0 x 36.0 cm
カタレイネ修道院美術館、ユトレヒト

Pieter Saenredam
View of a Chapel in the Northern Side-aisle of the St. Laurenskerk in Alkmaar
1635
Oil on panel 45.0 x 36.0 cm
Museum Catharijneconvent, Utrecht, inv. no. BMH s124
Museum Catharijneconvent, Utrecht / foto Ruben de Heer

第5章 Marine painters
海洋画家たち

世界を相手に貿易を行っていた海洋貿易王国、オランダ。海はオランダの発展や日々の生活に大事な役割を担っていました。港には大きな貿易船が停泊し、活況を呈していたことでしょう。オランダの海洋画では財力と国力を誇るかのような立派な貿易船や軍艦を描いた作品から、生活の糧として河口で釣りをする漁船を光に満ちた落ち着いた雰囲気で描いた作品まで、幅広い水辺の風景画があります。

コルネリス・クラースゾーン・ファン・ウィーリンゲン
《港町の近くにて》

1615-20年頃
油彩、板 42.5 x 80.7 cm
ロッテルダム海洋博物館

Cornelis Claesz. van Wieringen
An Armed Merchantman and Other Vessels near a Harbour City, Possibly Dordrecht
ca. 1615-20
Oil on panel 42.5 x 80.7 cm
Maritime Museum Rotterdam, inv. no. P2828
Purchased with the financial support of the Vereniging Rembrandt

第6章 Painters of still-life
静物画家たち

 鈍く光る銀の食器、ワインが半分つがれたガラスの杯、色とりどりの瑞々しい果物や野菜…オランダ絵画の神髄、静物画には様々なものが写実的に、細密に描かれています。これらの作品には漆器や陶磁器などの珍しい贅沢品も描かれ、当時、オランダには世界の遠方から珍しい物資が集まっていたことを反映しています。実物と見紛うほどの貝、器、皮をむかれた果物などを堪能できます。

ウィレム・カルフ
《貝類と杯のある静物》

1675年
油彩、カンヴァス 53.5 x 44.5 cm
財団美術館、オーフェルエイセル((オランダ)

Willem Kalf
Still Life with a Collection of Shells and a Shell Cup
1675
Oil on canvas 53.5 x 44.5 cm
Museum de Fundatie, Zwolle, Heino/Wijhe, inv. no. 2131

第7章 Painters of portraits
肖像画家たち

 17世紀オランダで隆盛した肖像画。多くは注文のもとに描かれました。夫婦が描かれた対の肖像画も多くあり、都市の裕福な市民たちの組合員が描かれた大規模な集団肖像画も流行しました。中流階級からの注文に応じた型にはまった様式が多い中、労働者階級などを生き生きとのびやかに描いた画家もいました。

イサーク・リュティックハイス
《男性の肖像(ピーテル・デ・ランゲ)》

1655年
油彩、カンヴァス 128.5 x 102.5 cm
ロッテルダム美術館(エラスムス財団より貸与)

Isaack Luttichuys
Portrait of a Man, Probably Pieter de Lange
1655
Oil on canvas 128.5 x 102.5 cm
Museum Rotterdam, inv. no. 11245
On loan from the Erasmus Foundation

イサーク・リュティックハイス
《女性の肖像(エリザベート・ファン・ドッベン)》

1655年
油彩、カンヴァス 128.0 x 102.0 cm
ロッテルダム美術館(エラスムス財団より貸与)

Isaack Luttichuys
Portrait of a Woman, Probably Elisabeth van Dobben
1655
Oil on canvas 128.0 x 102.0 cm
Museum Rotterdam, inv. no. 11246
On loan from the Erasmus Foundation

第8章 Painters of daily life
風俗画家たち

 風俗画、というとオランダ絵画を浮かべることが多いのではないでしょうか。数々の名作が残るオランダ絵画の人気分野の一つで、代表的な画家を多く輩出した分野でもあります。ヨハネス・フェルメール、ヤン・ステーン、ピーテル・デ・ホーホなど、世界的に有名な画家の目を通して、当時の日常生活を垣間見ることができます。また、風俗画には実際の生活場面を描いているように見えて、オランダの格言や教訓を伝えている作品も多く存在するといわれています。作品を読み解く面白さが味わえる分野です。


ヨハネス・フェルメール (1632-1675)

 1632年にデルフトで生まれました。父は宿屋の主人であり美術商でしたが、裕福ではありませんでした。彼が師事した画家は定かではなく、独学であったと思われます。1653年に聖ルカ組合に加入し、その前年の結婚を期にプロテスタントからカトリックに改宗しました。この夫婦は11 人もの子をもうけています。彼は生涯で45~50点程度制作したと考えられています。高値で売れたのでしょうが、義母からの経済的な支援を常に必要としていました。彼は43歳で亡くなり、1675年12月16日にデルフトで埋葬されました。彼の作品は没後忘れられ、しばしば他の画家の作品と誤解されましたが、19世紀中頃にフランスの美術批評家トレ・ビュルガーがこの画家の存在を大々的に喧伝したことで再び名声を得、現在まで多くの鑑賞者を魅了しています。

日本初公開
ヨハネス・フェルメール
《水差しを持つ女》

1662年頃
油彩、カンヴァス 45.7 x 40.6 cm
メトロポリタン美術館、ニューヨーク

Johannes Vermeer
Young Woman with a Water Pitcher
ca. 1662
Oil on canvas 45.7 x 40.6 cm
The Metropolitan Museum of Art, New York
Marquand Collection, Gift of Henry G. Marquand, 1889 (89.15.21)
Photo Credit: Image copyright ⓒ The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource,NY

第9章 Rembrandt and his pupils
レンブラントとレンブラント派

 オランダ黄金時代の巨匠のひとり、レンブラント・ファン・レインは数々の名作を生み出し、彼の作品は現在でも多くの人々に感銘を与えています。光と影を描く独特な技法、ドラマチックな構図や描写。レンブラントは工房を持ち、そこからは弟子たちが巣立っていきました。師匠に引けを取らない見事な作品を残し、名声を得た弟子もいます。レンブラントと弟子たちの素晴らしい技法と描写を紹介します。


レンブラント・ファン・レイン(1606-1669)

 1606年にライデンで生まれました。1631年頃にアムステルダムに拠点を移し、肖像画、歴史画で高い評判を得、経済的な成功をおさめます。この頃から美術品や骨董品などの蒐集をはじめ、1639年には市内に豪邸を購入しました。しかし1641年に妻が亡くなり、1640年代後半から経済的に困窮すると、1656年に破産、邸宅と蒐集品を失いました。このような苦しい状況であっても画家としての制作は衰えず、数々の傑作を生みだしました。80点以上の自画像を含む印象的な肖像画、ダイナミックな歴史画によって同時代の人々を驚嘆させました。また、多くの弟子を育てたことでも知られています。

日本初公開
レンブラント・ファン・レイン
《ベローナ》

1633年
油彩、カンヴァス 127.0 x 97.5 cm
メトロポリタン美術館、ニューヨーク

Rembrandt van Rijn
Bellona
1633
Oil on canvas 127.0 x 97.5 cm
The Metropolitan Museum of Art, New York,
The Friedsam Collection, Bequest of Michael Friedsam, 1931 (32.100.23)
Photo Credit: Image copyright ⓒ The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource,NY

カレル・ファブリティウス
《アブラハム・デ・ポッテルの肖像》

1649年
油彩、カンヴァス 68.5 x 57.0 cm
アムステルダム国立美術館

Carel Fabritius
Portrait of Abraham de Potter, Amsterdam Silk Merchant
1649
Oil on canvas 68.5 x 57.0 cm
Rijksmuseum, Amsterdam, inv. no. SK-A-1591
Purchased with the support of the Vereniging Rembrandt

第10章 Painters at the end of the Golden Age
オランダ黄金時代の終焉

 約100年ほどの間に多くの巨匠と傑作絵画を生み出したオランダ絵画の黄金時代は終焉を迎え、次の時代へと移ってゆきます。

アルノルト・ハウブラーケン
《イピゲネイアの犠牲》

1690-1700年頃
油彩、カンヴァス 79.5 x 63.4 cm
アムステルダム国立美術館

Arnold Houbraken
Sacrifice of Iphigenia
ca. 1690-1700
Oil on canvas 79.5 x 63.4 cm
Rijksmuseum, Amsterdam, inv. no. SK-A-4942